Field Note — 2026年9月限 SQ検証

9月限SQ直前、65,000円ATMで何が起きていたか — 建玉分布と参加者データの突き合わせ

日々のストライク別建玉分布(全ストライク)と、週次公表の取引参加者別建玉(ATM近辺のみ)を同じ期間・同じ限月で突き合わせ、SQ(特別清算指数)63,039.49円に向けて何が起きていたかを検証する。

対象 日経225オプション 2026年9月限(2609) 期間 2026-09-07〜09-11(SQ日) 実績SQ 63,039.49円

65,000円が突出した中心地だった

週次参加者データ(2026-09-04時点、2609限月)が対象にしているのは64,750〜65,250円の5ストライクのみだが、日々の建玉残高で同じストライクを追うと、65,000円だけが桁違いに厚いことがわかる。

日々の建玉残高(2609、ATM近辺ストライクのみ)
日付64,75064,87565,00065,12565,250
09-07Call212/Put499Call31/Put12Call4,738/Put4,465Call9/Put34Call19/Put100
09-08Call212/Put509Call31/Put33Call4,737/Put4,409Call9/Put35Call18/Put130
09-09Call214/Put434Call31/Put31Call4,814/Put4,818Call11/Put35Call89/Put124
09-10Call308/Put274Call90/Put28Call4,356/Put3,905Call53/Put34Call102/Put122

65,000円の建玉(Call・Putとも4,000〜4,800枚台)は、隣接するストライク(数十〜数百枚)より1桁多い。週次データ側でも、参加者ごとの建玉サイズは65,000円で最大1,156枚に達する一方、他のストライクは数枚〜数百枚どまり — 両方のデータが独立に「65,000円が中心地だった」ことを裏付けている

参加者の色分けは「個人 vs 外資ディーラー」ほど単純ではなかった

65,000円の売超・買超上位参加者を見ると、次のようになっていた(2026-09-04時点)。

65,000円ストライクの上位参加者

Put売超: ABNクリアリン証券(1,049) → ゴールドマン証券(951) → みずほ証券(250)

Put買超: バークレイズ証券(615) → ソシエテG証券(510) → SBI証券(340)

Call売超: JPモルガン証券(1,156) → バークレイズ証券(604) → ソシエテG証券(515)

Call買超: ゴールドマン証券(1,129) → ABNクリアリン証券(1,073) → ビーオブエー証券(652)

マニュアルの第9章では「海外系が売り方、国内個人向け証券が買い方に偏る」という一般的な仮説を述べたが、ATMの中心ストライクに限って言えば、売り方・買い方どちらの上位も外資系金融機関がほぼ独占している。国内個人向け証券(SBI証券など)はランキングに顔を出すものの、上位ではなく3〜5番手程度の規模にとどまる。

このランキングは「建玉の大きい上位15社」だけを切り出したものなので、個人投資家が参加していないわけではなく、個々の建玉サイズが小さいため上位に入ってこないだけと考えるのが妥当。ATMでの主要な需給は、個人対ディーラーという単純な構図よりも、外資系金融機関同士のマーケットメイク・裁定・機関投資家のヘッジ需要が支配的と見る方が実態に近い。

9月9日、Call/Putがほぼ完全に均衡していた

65,000円の建玉推移を見ると、9月9日だけCall(4,814)とPut(4,818)がほぼ同数になっている(差分わずか−4)。これはプット・コール・パリティ(同一ストライク・同一満期のプットとコールの価格は原資産価格と連動して一定関係を保つ)の裁定により、マーケットメイカーがATM近辺でプットとコールをほぼ同量ずつ建てる(または解消する)傾向があることの表れと考えられる。ATM近辺でCall/Put差分がゼロに近づくこと自体は、方向感のあるシグナルというより、マーケットメイク由来の機械的な現象である可能性がある点には注意したい。

結局、価格はこのゾーンに「ピン留め」されなかった

65,000円ゾーンにこれだけ厚い建玉と参加者の取引が集中していたにもかかわらず、実際のSQは63,039.49円となり、65,000円から約1,960円(約3%)下に離れた。同期間のマックスペイン(2609限月、9/7〜9/10でいずれも64,000円)も、実績SQよりは近いものの、やはり実際の着地点を言い当てることはできなかった。

これは「建玉が厚いところに価格が引き寄せられる」というピニング仮説に対する、反証的な実例と言える。SQ直前の数日間、市場の関心と建玉が最も集中していたのは65,000円だったが、価格はそこで足止めされることなく下に抜けていった。マニュアルで述べた通り、ガンマの引力よりも需給・マクロ要因の方が強く働いた局面だったと考えられる。

今後の観察ポイント